三浦しをんさんの『舟を編む』を読みました。しをんさんの作品を読んだのは『風が強く吹いている』に続いて2冊目。今度の題材は「辞書の編纂」という、普段なかなか触れることのない世界で、新鮮な気持ちでページをめくることができました。
辞書をつくるなんて、考えただけでも気が遠くなる作業です。膨大な言葉に向き合い、その一つひとつを丁寧に紡いでいく―。想像するだけで、常人離れした言葉への感性や忍耐が必要になることがわかります。そんな大きな挑戦に立ち向かう編集部の人たちの情熱が、読み進めるほどに心に響いてきました。登場人物それぞれの背景も描かれ、ふと「言葉は人と人との繋がりの中で受け継がれてきたのかもしれないなぁ」と感じました。
本を読みながら、以前『チ。』を読んだときに心に残った「文字は奇蹟」という言葉を思い出しました。多くの人の想いが込められた辞書が、世代を越えて受け継がれていく。その姿を思うと、これまで何気なく使ってきた辞書が、ひとつの奇蹟のように思えてきます。私たちの身近にある「当たり前」の中には、たくさんの人の想いや努力が詰め込まれているのかもしれません。
「これは誰の、どんな想いが込められているのだろう?」
そんな視点を持てるようになると、同じ景色でも違って見えてくる気がします。自分の世界の見方を少し変えてくれる―。そんな不思議な力を持った一冊でした。
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